京の町家で外国料理を食す


京都新聞より

   町屋のままだか、内装は現代風にそっくり作り直した店が多く、いささかがっかりするのも事実。

   そうした中でも、昔泣かせ羅の内装を生かしつつ、仏・伊・中華など日本料理以外の食を供するという

   「異文化共演」型の店も存在する。寺社仏閣や有名料亭など、定番の観光名所では味わえない「もう

   一つの京都」がそこにある。  


 「フランス人は古いものが好き。だから僕も京都は大好き。きれいで、静かで、素晴らしい。

 でも、ちょっと残念なのは、木造の町家がどんどん壊され、ビルや駐車場になつてしまうこと。

 東京などにはもうほとんどないのに。」

 


 一方、京都を拠点に、イベント企画や書籍編集などのオフィス「ミホプロジェクト」の一角にあるのが、元

 茶室を修復したワインサロン「yu−an」だ。文化講座や打ち合わせの為に設けた場だが、予定のない夜

 は一般にも開放している。

 床柱の左には、掛け軸と季節の花の一輪押し、右にはワイングラスの並ぶ棚。料理はつきだしだけだが

 イタリアワインの品揃えは、高級品から廉価なものまで約50書類と豊富だ。外には手水鉢や石灯篭を配

 した伝統そのままの坪庭。知人の家に招待されたような錯覚を覚える。「仕事で外国人を招くと、すごく喜

 ばれる。」(武智さん)のもうなずける。大学のまで京都で過ごし、卒業後は欧州へ。西洋芸術を学ぶ中で

 東洋文化の良さを再認識し、帰国した。「この町家オフィスで1番好きなのは坪庭。眺めているだけでエネ

 ルギーをもらえる感じがするんです。」「古い日本家屋で外国料理を楽しめるのは、京都ならではの体験で

 しょうね。」 南禅寺の門前旅館を転用し、フランス料理店「かしく・コルドンブルー」を開いた薮田進さんは

 「町家で異文化を味わう」魅力を力説する。

 ナイフとフォークの代わりに、はしを用意。メインディッシュに続いて漬物と軽くよそったご飯をだす。

 「気負わず、落ち着いた雰囲気の中でフランス料理を楽しんで欲しい。落ち着きこそが京都の良さなんで

 すから。」単純なミスマッチ感覚とは異なるというわけだ。

 生活上の不便に地価高騰が重なり、減りつづけた町家。だが、90年代半ば以降、定年退職者や若い創

 作家が移り住んだり、研究会が発足したりと、魅力の再発見が進んでいる。

 一般人の家をむやみにのぞくわけにはいかないが、飲食店なら出入も観察も自由。価格の面でも高級和

 風料亭などより気軽なところが多い。こうした店で、町家で暮らす「普通の人々」の生活や歴史に触れてみ

 るのも、古都の新しい楽しみ方ではなかろうか。


<主な町家レストラン>   すべて、京都市内にあります。

■yu−an ユーアン       中京区室町通御池上る      075-212-4456(要予約)
■かしく・コルドンブルー     左京区南禅寺草川町64      075-761-2780
■一之船入            中京区河原町通二条下る     075-256-1271

 湖南料理を基本に京野菜を使った創作中華。窓の外は高瀬川の船だまり                     

■エルバ・イタリアーノ      右京区嵯峨天竜寺芒.ノ馬場町8  075-881-0004

 元料理旅館のイタリア料理店。窓から庭園ごしに渡月橋が見える。

■心呼吸              上京区寺之内通大宮東入る    075-414-7377  (無国籍料理)

                    ※営業は、土・日・月と毎月12日のみ。

 ※京都の町では、「上る」あがる・は北へ進むこと。また、「下る」さがる・は南へ進むこと。 

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